2011年3月20日日曜日

「日本は反面教師」韓国ロースクール誕生1年

【隣の司法改革】(上)

 韓国屈指の名門私大、高麗(コリョ)大学。日本でいえば早稲田大のような存在だが、そのひときわ新しい校舎の教室で、年齢もまちまちの男女が真剣なまなざしを教壇に注いでいた。司法改革の結果、昨年から始まった3年制法科大学院(ロースクール)の一期生たちだ。

 男性院生の朴泰栄(パク?テヨン)さん(32)は入学まで米大手IT企業「インテル」に勤務。米国と日本で計3年間勤め、英語と日本語を流暢(りゅうちょう)に話す。ソウル大工学部を卒業し、米国で経営学の修士号を取得した。海外を飛び回るビジネスマン生活にもやりがいを感じていたが、「自分の可能性を広げたい」と奮起した。「『法の知識があればできることが広がる』。仕事を経験して実感したことでした」

 女性院生の厳秀珍(オム?スジン)さん(24)は高麗大と双璧(そうへき)をなす、いわば慶応大に当たる延世(ヨンセ)大経営学科を卒業。銀行や化粧品会社などの職種でインターン(実習生)を体験したが、どの分野でも法律と関連する部分が多いことに気づき、法科大学院の道を選んだ。

 朴さんや厳さんのように他大学出身者は半数近くに上り、会社員のほか、公務員や会計士、医師ら社会人経験者が多く、高麗大法学部出身者はむしろ少数派になる。

 「進路を定めて入学するため、やる気が違う。ほかの学部で優秀な成績を収めた院生は法学の飲み込みも早い」(法科大学院教員)と各大学院とも軒並み新院生に高い評価を下し、順調な滑り出しを自賛する。

 韓国の法科大学院は「専門性の高い法律家の養成」「司法試験の過剰競争と詰め込み学習の打破」を掲げ、日本に遅れること5年で誕生した。名称は同じでも設置校や入学者の大幅な制限や、法学部の廃止、国際法務、医療やIT法など、学校ごとの専門分野の特化といった大胆な変革で似て非なる制度となった。

 今、日本では74校もの法科大学院が乱立する。新司法試験の合格率は3割を切り、旧来の制度に比べ学力低下が指摘される。定員割れも8割。第三者評価機関は今年、3分の1の24校に「不適合」の評価を下した。がけっぷちの状況だ。

 「日本の制度を反面教師にした」。韓国の法曹関係者はこういってはばからない。

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 韓国?ソウルの中心街にいくつかの中堅私大法学部教授と法学部生1100人が繰り出し、デモを行うという珍しい光景があった。韓国政府が2008年2月、法科大学院(ロースクール)選定校を公表する前日、選定からはずれた私大教授らが「政府認定の白紙撤回」を叫んで街をねり歩いたのだ。法科大学院制をめぐり、韓国世論が最も沸騰したのが、その定員と認定校の数だった。

 「司法サービスを国民に行きわたらせるには定員3千人を確保すべき」と要求する教育界に対して、法曹界は「弁護士が増えすぎればサービスの質的低下を招く」と定員1200人を主張。政府は結局、中間をとって2千人に定員を定めたが、共闘していたはずの大学側が政府の認定校決定をめぐり真っ二つに割れた。認定されなければ、法学部が残っても卒業生が将来、司法試験の受験資格を失うためだ。

 もともと法学部を持つ大学は90校。その多くが認定を得るため、法科大学院専用の図書館を新設するなど、政府が示した基準に合うよう巨額の投資をしてきた。だが、政府は25校の認定校に各地の国立大を優先的に振り分け、ソウルの中堅私大の多くが選定から落ちる事態となった。

 選定をめぐる混乱の責任をとって当時の教育行政のトップ、金信一(キム?シンイル)教育副総理が辞任する一幕もあった。選に漏れた複数の私大が認定取り消しを求める訴訟に踏みきった。

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 傷を負ったのは、選定からはずれた大学だけではない。2千人の定員がソウル大から順に150?40人に機械的に割り振られたため、毎年300人を超す司法試験合格者を輩出していたソウル大は、入学者だけで半分以下に減った。

 高麗大も事情は同じで、年平均160人の合格者を出していたが、割り振られた定員は120人。さらに新制度では、法科大学院設置校は法学部を廃止する措置がとられた。法学以外の知識と経験を身に付けた院生の入学を促すとともに「学閥」の弊害をなくすための荒治療だった。

 この結果、高麗大にとって既存の法学部と大学院を合わせて350人だった定員が半分以下になる。選定過程で高麗大は「法科大学院の申請を撤回すべき!」との強硬論が教授陣から出されたという。しかし、激しい議論の末、同大は法科大学院新設の道を選んだ。

 「いずれは改革を行わなければならず、流れに逆らうことはできなかった」。同大法科大学院の金(キム?ギュワン)副教授はそう振り返る。

 新制度ではまた、法学部以外の出身者を3分の1以上、他大学出身者を3分の1以上採用するとの規定も設けられた。さらに入学試験から法学に関する問題が除外され、語学力やこれまでの経歴、ボランティア活動の実績から選ぶ選抜方法がとられた。

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 「韓国の法科大学院は日本の制度の問題点を改善していい形で導入した成功例だ」(日本弁護士連合会幹部)と日本の法曹界は隣国の司法改革に強い関心を示す。日本では司法試験合格率の低迷や質の低下から当初、期待された社会人経験者や他学部出身者の入学敬遠が目立ってきた。

 一方、韓国での多種多様な人材の入学は、世論の衝突をへて導入された国家の強硬政策によって「人工的」にうながされたものだった。

 「激しい葛藤(かっとう)をへて始まった韓国のロースクール。日本は緩やかな基準でスタートしたが、いま自由競争による淘汰(とうた)が起きている。方法論に違いがあるだけだ」。金副教授は両国の制度の違いをそう冷静に分析した上でこう話した。

 「院生たちが(来年以降に)新たな弁護士資格試験をパスし、社会に出た後にこそ韓国の法科大学院の真価が問われることになる」



 韓国の法科大学院の姿から日本の法曹養成を取り巻く閉塞(へいそく)状況を打開するヒントを探る。(桜井紀雄)

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引用元:ロハン(新生R.O.H.A.N) 専門サイト

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